2017年12月22日
現在の歯科医療では奥歯を保険適応で治療する際、詰め物や被せ物は銀歯しか使用できません。また前歯についても人目につく表面は白いプラスチックですが、その裏側は銀歯と同じ金属が使用されます。
保険適応で使用される金属は12%金銀パラジウム合金、通称「金パラ」と呼ばれるものです。金パラを構成する金属は金12%、パラジウム20%、銀50%、銅15%、その他の金属が3%となります。金パラの強度は銀歯として不足はなく、またなにより保険適応内で安く治療できる点がメリットといえます。
その一方で患者様が銀歯を嫌がる理由として最も多いのは、やはり見栄えの悪さです。そのため見た目にそこまでこだわらないという方は、治療に銀歯を使用しても特に気にはなりません。しかし銀歯は見た目以外にも体に与える様々な影響が問題視されています。
■金属アレルギーの問題
銀歯の最大の問題は金属アレルギーです。もともと金属アレルギーを持っている患者様には治療で銀歯を使用することができません。
また金パラに配合されるパラジウムという金属は近年金属アレルギーを引き起こすことが指摘されています。そのため医療先進国であるドイツやスウェーデンなどでは幼児や妊婦にパラジウム合金を使用しないよう推奨されています。
■耐久性に問題があり劣化しやすい
金パラの主成分は銀と銅で、全体のおよそ6~7割を占めています。この銀と銅はさびやすく、長期間使用すれば変形や劣化をまぬがれません。
特に様々な食べ物や飲み物が入り込む口腔内は、酸やアルカリなどの化学的な変化や温度変化が激しく、このような厳しい環境に置かれた金パラは通常よりも早く劣化しやすくなります。そのためせっかく治療をしても、将来的には銀歯の劣化により再治療が必要になる確率が高くなるでしょう。
■溶けだした金属が体に悪影響を及ぼす可能性も
金パラに含まれる銀や銅は、ただ劣化するだけでなくその成分が少しずつ口腔内に溶けだす恐れがあります。その証拠に歯科では溶けだした金属が歯ぐきを黒く変色させるケースが後をたちません。この金属による歯ぐきの黒ずみは「メタルタトゥー(金属刺青)」とよばれ、残念ながら治すには外科的に切り取るか、もしくはレーザーによる治療が必要となります。
また私たちの体には外部から侵入した異物を外に排出しようとする免疫という機能がありますが、近年は銀歯がこの免疫にも影響を及ぼす可能性があるといわれています。詳しいことはまだ研究段階ですが、一説によると銀歯から溶けだした金属を体が異物と判断し、体の免疫機能が常に反応し続けてしまうということです。これによって免疫機能が過剰に働いたり、反対に免疫機能が疲労して免疫力が弱まってしまう点が指摘されています。